大概の看護学生は、教員からこのように言われるのではないでしょうか?
最初は外科で苦労した方が良い
実際に、私はそのように言われて納得した部分もありました。
治療と並行して入院や手術の準備などを行うため、知識だけではなく時間管理も身に付くからです。
しかし、性格や気質によっては合わない場合があります。
仕事が覚えられない→先輩から叱責される→仕事ができない人だと思われる→人間関係が拗れていく
このような負のスパイラルに陥ってしまいます。
特に新人や中途採用として勤務した際に、その職場の業務を覚えることが必要になるので医療知識に加えて業務内容も覚えなくてはなりません。
その場で覚えても忘れるし、メモしても数日後には思い出せない…
どうしたらいいんだろう
そんな記憶力に自信のない看護師に向けて、あらゆる本を参考に看護師向けの記憶術をまとめました。
最後に参考書籍を掲載しているので、興味がある場合は手に取ってみてくださいね。
看護師の記憶術:結論
- 記憶したい事はすぐにメモを取ろう
- 覚えられないことは、理論的に理解できると記憶できる
- 反復して記憶させて定着させよう
学生や新人の頃に”メモを取りなさい”と叱られたことはないでしょうか?
メモなんて…と思っていた方、実はメモを取るという行為は脳科学的にも理に適っているのです。
脳科学を利用して記憶力を高めれば、前の自分よりもより成長できます。
メモを取る必要性について次の項目で解説します。
メモ魔になろう
皆さんは、エビングハウスの忘却曲線という図を見たことはありますか?
科学的に忘却の法則を証明した図のことで、20分後には42%を忘却し、58%を覚えていると記載されています。
つまり、すぐにメモを取らないと脳は忘れてしまうということです。
脳は不必要な情報を忘れるようにできているので、覚えさせたい場合にはその場で書き残す必要があります。
メモ魔になるということは、忘却を阻止するということです。
では、記憶を定着させるにはどうしたらよいのか解説します。
メモしたことを理解しよう

ここで勘違いしないでいただきたいのは、メモは完璧に取る必要はないということです。
のちに読み返して自身が理解できるぐらいのレベルで良いのです。
とにかくその時の情報をメモすることだけに集中しましょう。
私の場合は、メモ帳の右をメモ用・左を清書用としてあけておきました。
自宅に帰ってから左に清書することで思い出し、不明点は調べて書くことで理解を深めることができるからです。
元祖カリスマ講師である出口汪は著書の中でこう述べています。
つまり学習とは
論理(理解)→記憶→論理(思考)→記憶の血肉化→論理力の強化→記憶の強化
といったサイクルに他なりません。
奇跡の記憶術 論理と記憶の合体 P.48
つまり、理解できていないことは脳が記憶することを拒絶するため記憶できないのです。
メモしたことを理解し脳に覚えさせましょう。
理解したことを実践してさらに記憶を定着させよう

理解していても、現場で活かせなければ意味がありません。
理解したことを体で覚えて記憶を定着させる必要があります。
つまり理解したことをアウトプットさせていくのですが、これを運動性記憶といいます。
精神科医であり脳科学や心理学に精通している樺沢紫苑は、運動性記憶について自身の著書で下記のように述べています。
運動性記憶の特徴は、一度覚えるとその後はほとんど忘れることはないということです。
小脳を経由するので、経路が複雑になり、多くの神経細胞が働くことで記憶に残りやすくなる。だから、一度覚えたら忘れにくいという特徴があるのです。
学びを結果に変えるアウトプット大全 P.14-15
”積極的に実践しなさい”と私を含め、消極的な方だと一度は言われたことのある言葉でしょう。
実践するということは、記憶を定着させる良い機会となることが脳科学的に証明されているので、心当たりがある場合は積極的に取り組んでみましょう。
理解したことを自分の考えにまでまとめよう

例えば、CVC(中心静脈カテーテル)の包交に関する技術を学んだとします。
手順を学んでいる過程で”なぜ清潔動作が必要なのか”という疑問が出てくると思います。
覚えられない人は、この疑問をスルーして手順だけ覚えてしまうので一見理解していると思われがちですが、これでは医療者としては不十分です。
CVCはどこの静脈に挿入されていて、清潔動作をしなければどのようなリスクが伴うのかまで考える必要があります。
指導者の立場である場合には、相手の記憶の定着力向上のために優しく”何故”を問いかけてみましょう。
指導される立場の場合には、疑問を放置せず自身の言葉で説明できるところまで落とし込み、実際に聞かれたら自身の言葉で説明しましょう。
『話す』という行為も運動性記憶の一種ですので、脳が活性化し記憶の定着に大きく貢献してくれます。
記憶をさらに定着させる方法
メモ魔になる必要性を理論的に説明してきましたが、記憶をさらに定着させる方法を説明していきます。
全て科学的に証明されているので、より記憶力を高めたい場合には参考にしてください。
インプットとアウトプットを3:7の割合でおこなう

インプットをたくさんした方が良いんじゃないの?
アウトプットを多く行った方が記憶の定着率が高いと実験で証明されているんだよ。
コロンビア大学の心理学者が、小学生~中学生を対象に実験を行ったところ「覚える時間」に約30%の時間を費やしたグループが高得点を取りました。
つまり、インプットよりもアウトプットを重視したグループが記憶の定着率が高かかったということです。
3:7という数字は、インプットとアウトプットの黄金比と言われています。
これを医療現場に例えると、学んだ知識を誰かに説明したり自分の意見を述べながら質問すること、そして看護技術を積極的に実践することでアウトプットに繋がります。
前の項目でも説明しましたが、これは運動性記憶にあたりますので記憶の定着に大きく貢献してくれます。
過剰にインプットせず、アウトプットを常に意識して記憶を定着させていきましょう。
覚えたいことは反復して記憶させよう

科学的に忘却の法則を証明したエビングハウスの忘却曲線を参考に説明します。
理解して実践していても復習しない場合はどうなるのでしょうか。
結果は、1か月後には79%を忘却することになるので放置していたら全て忘れてしまいます。
記憶を定着させるためには、理解→記憶→実践を繰り返す必要があります。
頭をつかうことは毎日こつこつ、記憶はまとまった文章を一息に覚え、それを忘れないうちに反復せよ、これが理にかなった学習法です。
奇跡の記憶術 覚えにくいものと覚えやすいもの P.92 著者:出口汪
脳に入力された情報は「海馬」というところに仮保存されます。その期間は、2~4週間です。海馬の保存中に、その情報が何度も使われると、脳はその情報を「重要な情報」と判断し「側頭葉」の長期記憶に移動します。一度、側頭葉に記憶されると、その記憶は忘れづらく、長期間覚えていることができます。
学びを結果に変えるアウトプット大全 P.17 著者: 樺沢紫苑
どの書籍を読んでも、繰り返し反復して覚える必要性について解説されています。
2週間で3回以上アウトプットすると、記憶が定着しやすいといわれていますので現場でもアウトプットする意識をもって取り組んでみましょう。
脳を整理する時間を与えよう

インプットとアウトプットを行っていると、脳が疲れてくると思います。
自身のコンディションを整えることは脳が良い働きができるようにすることと同じです。
時間術のプロである上坂徹は著書の中で下記のように述べています。
脳科学者の人から、人は脳を整理するために時間が必要になる、という話を聞いたことがあったのです。そして男性の場合は、脳を整理するのに何が必要になるのかというと、ボーっとする時間なのだそうです。
ちなみに女性はどうやって脳を整理するのかというと、しゃべることによって、なのだそうです。
プロの時間術 コンディションを整える P.59-60
脳を365日休みなく使い続けるのは無理があります。
コンディションを整えるために、ボーっとする時間や喋る時間を作るようにしましょう。
看護師の時間術については別記事にて詳しく解説しているので興味がある場合はそちらを参考にしてください。(順次公開予定)
睡眠は6時間以上しっかり取ろう

学生時代を思い出してみてください。
一夜漬けで勉強したにも関わらず、ほとんど覚えていなかったという経験はないでしょうか?
睡眠には「ノンレム睡眠」という体も脳も休める深い睡眠と、「レム睡眠」という体は休んでいるが脳は活動している睡眠があり、それらを繰り返しています。
この「レム睡眠」というのが、記憶の定着に大きくかかわっているといわれています。
スティックゴールドは学習したその日の睡眠を六時間以上とらないと、学習内容が記憶として定着しにくいと発表しています。
奇跡の記憶術 記憶における睡眠の活用 P.86-87 著者:出口汪
このように、科学的にも睡眠と記憶力の定着は密接に関係していることが証明されています。
記憶の定着のためにも、睡眠時間の確保を意識してみましょう。
まとめ
- メモを取る習慣をつける
- 理解→記憶→実践を繰り返す
- 話す・書く・実践するは運動性記憶のため忘れにくくなる
- アウトプットを意識して取り組む
頑張って暗記することが大事だと思ってたけど、アウトプットの方が大事だったなんて目からウロコだったよ。
そうだね。消極的だった頃が凄く悔やまれるよ。
今後は記憶の定着のためにもアウトプットを意識して取り組みたいよね。
医療技術は日々目まぐるしく進歩していくので、医療者は勉強し続けていく仕事です。
そのため、新しい知識を吸収していく力を身に着けていると職場でも臨機応変に動くことが可能となります。
自身の可能性を信じて、取り組んでみてくださいね。
頑張っても報われない、人間関係が改善しない場合

医療者には努力家が多いと思いますが、日々努力し続けていても周囲から認められず人間関係が改善しない場合もあります。
クセの強い上司の場合、後輩の立場だと強く言えないですし困ってしまいますよね。
クセの強い上司との関わり方に関する記事も書いているので、その職場で続けていたい場合には参考にしてみてください。(順次公開予定)
ただ、それでも改善しない場合には職場を変更することも一つの手だといえます。
看護師にオススメの転職サイトについて記載しているので参考にしてください。
交渉できない、交渉しても退職させてもらえない…などの問題がある場合には退職代行業者に依頼するのも一つの手です。
看護師にオススメの退職代行業者に関しても記載しているのでそのような場合には読んでみてください。
参考書籍


